2025年度第1回ボイタ研究会症例検討会報告
 
日時:2025年7月6日
会場:青木医院
講師:伊藤三和子先生
参加者
佐藤 雅男(こうの整形外科)、山﨑 直信、石川 若奈(江東病院)
松澤 裕美子(東部地域療育センターぽけっと)
長屋 孝司(ろこ・らぼ)、安藤 研介(岡山赤十字病院)、下浦 健二
荒井 千晶(大阪赤十字病院附属大手前整肢学園) 、
橋本 尚幸(静岡済生会療育センター令和)、松井 恵理子(かいつぶり診療所)
辻村 格(辻村鍼灸接骨院)、中津 満寿美(大阪府済生会吹田療育園)
西田 まゆみ(聖ヨゼフ医療福祉センター)、出野 智子、野村やよい(青木医院)、
 

症例検討会感想(研究会役員)
聖ヨゼフ医療福祉センター 西田まゆみ

今年度第1回目の症例検討会が、76日に滋賀の青木医院で行われました。
今回は、講師に伊藤先生をお迎えし、久しぶりに成人の患者様に御協力いただく症例検討会でした。
参加者は15名で、その内成人コースを終了された方が4名、インストラクターの先生も5名の参加があり、豪華な顔ぶれでした。
今回は施設の都合で1日の開催でしたが、ゆとりのある時間設定で2症例をじっくりと評価・治療をさせていただくことができました。
私が特に印象的に残ったこと、今回協力いただいた患者様が自分の体の事を良く分かっおられるという事です。治療後の変化をどう感じておられるかや、普段の治療での効果の持続期間であったり、また以前受けておられたリハビリとボイタ法との違いについてもお話して頂きました。ボイタ法の良さを実感されておられ、「ボイタ法がもっと世間に拡まるように頑張って下さい!そして私のようにボイタ法に出会える方が増えると良いと思います。」とエールを頂きました。担当の出野先生との信頼関係も素晴らしいと感じました。
今回、改めてボイタ法の良さを患者様から教えていただき、私も患者様が喜んでもらえる治療をしたい!と思った症例検討会でした。協力いただいた患者様、青木医院の野村先生、出野先生、参加いただいた先生方、講師の伊藤先生、ありがとうございました。


2025年度第2回ボイタ研究会症例検討会報告
 
日時:2025年7月25日、26日
会場:仙台エコー医療療育センター
講師:松澤裕美子先生
参加者
高橋 花菜(ケアポートみさわ)、時實 郁(福島整肢療護園)
田川 久美子(横浜市総合リハビリテーションセンター)
竹原 祥平(茨城福祉医療センター)、牟禮 努(大阪赤十字病院附属大手前整肢学園) 、橋本 真希子、伊藤 颯(仙台エコー医療療育センター)、
見学:2名

症例検討会感想(研究会役員)
茨城福祉医療センター 竹原祥平

726-27日に仙台エコー医療療育センターで、2025年度第2回症例検討会が行われました。センターでは対外的に初めて症例検討会を開催して下さり、無事に症例検討会を終えられたこと、患者さんの変化をたくさん感じられたこと、施設スタッフの方が開催して良かったと言って下さったことに嬉しさを感じています。症例検討会を快く引き受けて下さり、準備・運営に関わられた橋本先生、スタッフの皆様に感謝しております。
橋本先生は、福島整肢療護園から仙台に移られ、1人でボイタを行いつつ、少しずつ患者さんに対する治療体制を整え、患者さんに良い変化を与えることで仲間を増やし、職場に認められて仕事をされている様子をお見受けしました。今回の症例検討会では、施設長である医師やボイタを受けていないリハビリスタッフ数名の方が見学に来られていました。また、症例検討会前の廊下では夜勤明けの看護師の方と患者さんの情報を共有されておられました。たくさんの職種の方とコミュニケーションをとり、仕事をしやすい環境作りをされている姿に、自分にももっとできることがあると刺激を受けました。
さて、症例検討会の方に話しを戻します。講師は松澤先生で、2日間で延べ7名のボイタセラピストの参加がありました。参加者は26期の方から12期の方と幅広く、参加者が少なかった分、たくさん症例に触れることができました。また久しぶりにお会いした先輩方の評価や治療をみることができ、視野が広がる機会になりました。私は日曜日だけの参加でしたが、自己課題を勉強する貴重な機会となりました。1日だけの参加の感想文になりますが、学びと所感をここに記させて頂きます。
症例はいずれも重症心身障害の方で、1症例目が9歳、2症例目が23歳の移動なしレベルでした。1症例目の方からは、少しの反応とともに実際的な出発肢位が変わるということを学びました。治療開始の際、丁寧に実際的な出発肢位をとりましたが、治療の経過とともに、求める反応が不十分であったときに、更に出発肢位を見直し修正したことで、求める反応が出ました。1度丁寧に出発肢位をとったから良いと思い込み、そのままにするのではなく、出た反応とともに見直していく重要性を体感しました。2症例目の方は、車椅子姿勢で右股関節が屈曲せず、骨盤・体幹が左回旋・前傾し、右骨盤が前に付き出たような姿勢でした。治療により骨盤と右肋骨の間が広がり、軸が整ったことで、治療後は骨盤が車椅子におさまるようになりました。見学の方の反応が顕著で、やはり、姿勢の質と機能が結びつくと、ボイタを受けていない方にも効果がわかりやすくインパクトがあると感じました。
松澤先生は、丁寧に触診されていて、患者さんの骨位置、アライメントを何度も確認されていました。実際的な出発肢位も患者さんを動かしながら決めておられました。頭で考えた所に患者さんを動かすのではなく、患者さんの状態を手で感じ、確認しながら動かされていたことがとても丁寧で、自分の臨床にも足りていない部分だと気付かされました。
今年度はあと4回症例検討会があります。1日だけの参加でも、得るものはたくさんありました。感染症に気を配りながら、以前のようにたくさんの会員の方が参加され、交流が深まることを切に願っています。

症例検討会感想
仙台エコー医療療育センター 橋本真希子

今年度第2回症例検討会は、仙台エコー医療療育センターを会場とさせていただき、7月26日(土)午後、27日(日)午前に行われました。 
当センターで症例検討会を行うのは初めてのことでした。運営において必要な書類、会場準備、症例の選択…至らない点があったかと思いますが、準備を進めていく中で、南九州病院の假屋先生が手厚くサポートして下さったおかげで、無事開催に至りました。 
開催にあたり最も気を使ったのが症例の選択でした。主治医と保護者の理解を得ることと医療的ケアが少ないこと、骨折や急変等のリスクが少ない比較的健康な利用者さんを症例としました。講師の松澤先生と事前に心配事を共有し、参加者の先生方には感染対策にもご協力いただき、当日と終了後数日様子観察をして、何事もなく無事に終了できましたことをここに感謝申し上げます。 
  症例検討会には、講師の松澤先生と5名の参加者が遠路はるばるいらしてくださいました。少人数のメリットがあり、私と伊藤はもちろん、これからコースに出るスタッフと見学のスタッフも会に混ざりやすい雰囲気を作っていただいて、和気あいあいと意見交換できアットホームで楽しい症例検討会となりました。 
症例提示の際には、日頃感じている治療の難しさ、予後を考慮した不安要素を含めて情報提供させていただいたので、問題点を絞りやすく、その問題が解決できるように評価し、どのように手技を使うのか、と明確な目標を持って望めました。 
私は、2症例提示させていただきました。1症例目は、外来に通われている18歳の脳性麻痺痙直型四肢麻麻痺、GMFCSレベルⅣの方でした。16歳でこども病院から当センターにリハビリを移行し、ボイタ法を始めた方でした。幼少期は量的なリハビリが中心で、長年パラ水泳や自転車競技に精力的に取り組んでいるため、少しでも楽に競技が続けられることを目標としていた方でした。 
姿勢・運動の特徴として、脊柱の抗重力伸展が不十分で、特に胸腰椎移行部から腰椎の後弯が強く硬さがありました。とにかく脊柱を伸ばさなきゃ伸ばさなきゃと思って今までアプローチしてきましたが、伸展だけではなく回旋要素を出すことと、上肢帯含めた上部体幹の弱さにもバランス良くアプローチするようアドバイスを受けました。 
治療では、2相をさせていただきました。腰椎の伸展を出すことにとらわれて、骨盤を尾側に引きすぎていて、寝返りから四つ這いへの前進運動であることを忘れてはいけないとご指摘頂きました。 
また、脊柱の回旋運動をよりアクティブに引き出すアプローチが不足していました。ティシュカンテやポジションは、やってみたいけれどもリスク管理をしながら一人でやるのが怖くてできずにいたので、この機会にアドバイスを頂きながら挑戦することができ、アプローチが展開できてとても嬉しかったです。 
もう1症例は、入所されている9歳の外傷性脳挫傷後遺症、てんかんを合併しているGMFCSレベルⅤの方でした。問題は2点ありました。1つ目は、経口摂取はしていませんが、体調不良時やてんかん発作の影響で覚醒が低い時は、喘鳴が症状として出ることが経年的に増えてきた方で、呼吸機能の悪化に注意しなければいけないこと。2つ目は、左股関節が再脱臼して手術を控えていることでした。前回脱臼した時より臼蓋の形成は良くなっていたにも関わらず、再脱臼してしまったことに、非常に悔しさを抱いていました。 
評価にて、中枢部は低緊張で幼児期からの左右差が残存しており、四肢関節は屈曲パターンで硬さがありアンバランスが生じているということでした。 
頭頚部部の軸伸展を意識し、上肢帯の支持により抗重力活動させることをポイントとして治療しました。頭頚部の軸は難しく、見かけ上、正中に位置取りをした時よりも、脊柱の軸上に位置取りをした時の方が、反応が高まることが目に見えてわかりました。また1相では、股関節に近い大腿骨内側上顆を活用することも方法として挙げられていました。治療後、喘鳴が消失して、股関節周りは緩くなった他、体が軽くなったことに驚きました。 
全体を通して、期待する反応を引き出すために、松澤先生は、体の変形の状態を丁寧に触診されて、胸郭・肩甲骨や骨盤などを頻繁に動かして、どこなら姿勢保持できるのか、反応が出るのか探りながら治療の展開をされていたことがとても印象的でした。 
症例検討会の後、見たこと体験を通して学んだことを再現できるように一つ一つ思い出しながらやってみました。私自身、焦っていたり力みすぎたりしていたことに気づき、少し落ち着いてやれば、視野も広くなり反応も出やすくなったように感じました。 
最後に、ボイタ法が当たり前に出来た前職から、誰もボイタ法を知らない現職で早8年目。2年前に伊藤が来るまでは、同じ視点と考え方を持つ同僚がいなかったのですが、ボイタ法をやらないという選択肢はありませんでした。悩みながらも続けてきて、やっと仙台(宮城)の患者さんを診て触れていただくことができて本当に感無量でした。今回ご協力頂きました患者様、講師の松澤先生、假屋先生、参加者の先生方、当センタースタッフに感謝致します。ありがとうございました。 


2025年度第3回ボイタ研究会症例検討会報告
 
日時:2025年8月23日、24日
会場:東部地域療育センターぽけっと
講師:山﨑直信先生、富樫和美先生
参加者
山田 祐輔(浜松市発達医療総合福祉センター 友愛のさと)
内田 彩(ジャスト訪問看護ステーション出来町)
水戸 杏奈(名古屋市南部地域療育センターそよ風)
竹原 祥平、齋 桃子、安部 ともか(茨城福祉医療センター)
仮屋 成美(南九州病院) 、前多 千春(名古屋市中央療育センター)、
池田 なぎ美(ファミリアナース訪問看護ステーション)
原 正樹(神奈川県立総合療育相談センター)
橋本 尚幸、橋本 真澄、山下 刀夢(静岡済生会療育センター令和)
荒井 千晶(大手前整肢学園)、石井 康朗(新潟県はまぐみ小児療育センター)
刈谷 仁美(藍野療育園)、安藤 研介、山田 綾子(吹田療育園)
高橋 花菜(ケアポートみさわ)、辻村 格(辻村鍼灸接骨院)
大塚智子(名古屋市西部地域療育センター)、白井知里
松澤 裕美子、袁 麗清、國行 かおり(東部地域療育センターぽけっと)

症例検討会感想(研究会役員)
国立病院機構南九州病院 仮屋成美

猛暑の中、今年度第3回目の症例検討会が、8月23日、24日に名古屋の東部地域療育センターぽけっとで行われました。
 今回は、参加申し込みが多くなると予測されましたので、講師に山崎先生、富樫先生をお迎えしての開催となりました。予測通り、参加者は26名となり、期日前に申し込みを制限せざるを得なくなりました。参加したかった方には申し訳ありませんでした。参加者は、北は青森、南は鹿児島と各地域からで、コースを終わられたばかりの26期と25期の方が12名と多数参加されており、熱い思いを感じることでした。
 2日間、2グループに分かれて8症例の方にご協力いただき、評価と治療をさせていただきました。事前に症例の情報を教えていただき、参加者が自分の希望で選びましたが、人数が偏ることなくグループが決まりました。同じフロアで行っていたのですが、ぽけっとの先生方の工夫と配慮で、他グループが気にならず、評価と治療に集中できました。
 久しぶりに症例検討会に参加された方、初めて参加された方とそれぞれの経験年数やテーマも違っていたと思います。しかし、講師の先生方が、参加者が意見や考えを話しやすい雰囲気を作ってくださりました。特に2日目は、治療の際見ている参加者がアドバイスし、講師の先生がそこから修正へと導いていかれる場面が増え、グループでの治療となっていました。そして、治療の時間だけでなく、参加者同士での練習や質問もあり、積極的なコミュニケーションがはかれていました。私自身、久々に他施設での症例検討会参加で、改めて丁寧にしっかり反応を積み上げていくことを日々の臨床で行っていかなければと、強く刺激を受けた2日間でした。
 協力いただいた東部地域療育センターぽけっとのお子さま、お父さま、お母さま、松澤先生、袁先生、國行先生、参加いただいた先生方、講師の山崎先生、富樫先生、本当にありがとうございました。11月は、南九州病院で症例検討会があります。皆様、お待ちしております。

症例検討会感想
東部地域療育センターぽけっと 袁麗清

8月23日、24日に開催された第4ブロック症例検討会は、猛暑の中、全国各地からたくさんの先生方にご参加いただき、とても有意義な2日間となりました。
私自身、約3年間の産休育休を経て、昨年度復帰しましたが、これまでなかなか外部研修に参加する機会を持てずにいました。今回、自分の担当ケースを通じて症例検討会に参加できたことを、大変嬉しく思っております。
症例検討会の講師を務めてくださった富樫先生、山﨑先生、そしてご参加いただいたすべての先生方に、心より感謝申し上げます。
今回の症例検討会では、先生方の評価の視点やご意見、治療技術に直接触れることで、自分自身の評価の仕方や考え方、治療中に見えてくる反応の捉え方、さらには観察力や技術面での課題にも改めて気づくことができました。
特に、自身の症例を通して、姿勢や動作の機能改善には、肩甲帯、骨盤帯を繋ぐ「軸器官」の重要性を再確認できたことが、大きな学びとなりました。また、全身の反応を出すためには、誘発帯の位置や方向を丁寧にということだけでなく、患者様の反応に応じて自分自身の身体の使い方や、力の入れ方を細かく調整していくことの大切さを実感しました。
私自身、力が入りやすいことは自覚しており、力を抜くことは意識していましたが、ただ、力を抜くだけでなく、反応に合わせていくことが必要であることも改めて学ばせていただきました。
今後の臨床でも、今回得た気づきや学びをしっかりと活かし、より質の高い治療が行えるよう努力を続けていきたいと思います。